2006年 11月 13日
Taking Heavy Metal Seriously#3 |
IRON MAIDENのライヴでファンのマナーについて考える
四半世紀にわたって、ヘヴィメタルシーンの最前線で活躍してきたIRON MAIDEN(以下、メイデン)が新作A Matter of Life and Deathに伴う来日を果たした。かなり前の話になるが、今回はその時に考えたこと。ヘヴィメタルファンが守るべきマナーはあるか。
ここでいうマナーとは、ポイ捨てをしないとかそういうことではない。ファンはバンドを盛り上げるために、ライヴ中は大騒ぎをするべきかどうかである。なぜそれが問題になるかというと、今回、メイデンは、新作を全曲披露するというセットリストを組んだからである。
新作は素晴らしい出来だったが、ライヴで盛り上がるようなタイプの曲は少なかったように思う。加えて、これだけ長い歴史を持つバンドだと、初期の頃にファンで、最近の曲は知らないが久しぶりに会場に足を運んでみた、という年長のファンも多い。彼らにとって、新作を全曲披露するライヴ前半は退屈だっただろう。
このことはファンが情報交換する掲示板で取り上げられた。自分が目の前のパフォーマンスに熱狂している横に、つまらなさそうに腕組みして棒立ちしているファンがいれば、当然興ざめである。ノリが別れるライヴではいつも議論される問題が、今回もまた起こった。熱狂を返すのがバンドや他のファンへのマナーであり、それがバンドを育てることになるか。
熱狂派の主張は、概ね、1:ノリが悪い奴がいるとこっちまでしらける、2:ノリの悪さがバンドのパフォーマンスに悪影響を及ぼす、3:特に会場前方でノリが悪いとバンドの目に触れる、会場後方の熱狂派をしらけさせるなど悪影響が甚大、4:その程度のファンなら、遥か後ろに座ってる熱狂派の俺とかわってくれ、の4点。
1、2、3は要するに他人に迷惑をかけるな、という主張。バリエーションとして、前方の良席を確保した者はライヴを盛り上げる義務があると説くものもある。4は良い席を確保できなかった熱狂派の恨み言であるが、たまに、大したファンでもない業界関係者がコネで良席を確保することへの非難を含む。
他方、棒立ち派の主張は、概ね、1:楽しみ方は人それぞれなので、放っておいてくれ、2:自分は楽器をしているので、演奏技術に注目しているだけ、3:本当につまらんのだから仕方がない(特に今回のメイデンのライヴ前半)、の3点。2と3には理由があるので、重要な対立は熱狂派の1、2、3と棒立ち派の1である。
人数でいえば、圧倒的に多いのは熱狂派なので、通常のライヴで深刻な問題になることはそう多くない。しかし今回のメイデンに関していえば、新作を全曲披露する前半が終わり、Fear of the Darkのイントロが始まった時の大歓声は、ヒット曲に対する歓声に加えて「やっと知ってる曲が!」という年長ファンの安堵感もあったのではないか。私のいた2階席からみた会場の様子は、そういう声が聞こえてきそうなくらい、今回棒立ち派が目立ったように思う。
考えてみるとWrathchildもTroopersもThe Number of the Beastもないメイデンのライヴという、ある意味貴重な経験をしたとも言えるし、For the Greater Good of Godの情感豊かなヴォーカルやLoad of Lightの高音を完璧に再現したブルース・ディッキンソンのパフォーマンスなど、素晴らしいライヴであったことは間違いないが、ライヴとしての盛り上がりを考えれば、前回来日時の方が上だったように思う。
新作がライヴ向きではなかったこと、その新作が時間にしてライヴの約3分の2に達したこと、ファンの年齢の幅の大きさが、今回、予期せず熱狂派と棒立ち派の対立を大きく刺激した。コンサートの楽しみ方など人それぞれというのは大前提であるが、熱狂派をしらけさせるような楽しみ方がありか、良席を確保した者に熱狂する義務が認められるかなど、自由と義務と言葉を置き換えれば、法学部ですぐに議論できそうな問題でもある。
四半世紀にわたって、ヘヴィメタルシーンの最前線で活躍してきたIRON MAIDEN(以下、メイデン)が新作A Matter of Life and Deathに伴う来日を果たした。かなり前の話になるが、今回はその時に考えたこと。ヘヴィメタルファンが守るべきマナーはあるか。
ここでいうマナーとは、ポイ捨てをしないとかそういうことではない。ファンはバンドを盛り上げるために、ライヴ中は大騒ぎをするべきかどうかである。なぜそれが問題になるかというと、今回、メイデンは、新作を全曲披露するというセットリストを組んだからである。
新作は素晴らしい出来だったが、ライヴで盛り上がるようなタイプの曲は少なかったように思う。加えて、これだけ長い歴史を持つバンドだと、初期の頃にファンで、最近の曲は知らないが久しぶりに会場に足を運んでみた、という年長のファンも多い。彼らにとって、新作を全曲披露するライヴ前半は退屈だっただろう。
このことはファンが情報交換する掲示板で取り上げられた。自分が目の前のパフォーマンスに熱狂している横に、つまらなさそうに腕組みして棒立ちしているファンがいれば、当然興ざめである。ノリが別れるライヴではいつも議論される問題が、今回もまた起こった。熱狂を返すのがバンドや他のファンへのマナーであり、それがバンドを育てることになるか。
熱狂派の主張は、概ね、1:ノリが悪い奴がいるとこっちまでしらける、2:ノリの悪さがバンドのパフォーマンスに悪影響を及ぼす、3:特に会場前方でノリが悪いとバンドの目に触れる、会場後方の熱狂派をしらけさせるなど悪影響が甚大、4:その程度のファンなら、遥か後ろに座ってる熱狂派の俺とかわってくれ、の4点。
1、2、3は要するに他人に迷惑をかけるな、という主張。バリエーションとして、前方の良席を確保した者はライヴを盛り上げる義務があると説くものもある。4は良い席を確保できなかった熱狂派の恨み言であるが、たまに、大したファンでもない業界関係者がコネで良席を確保することへの非難を含む。
他方、棒立ち派の主張は、概ね、1:楽しみ方は人それぞれなので、放っておいてくれ、2:自分は楽器をしているので、演奏技術に注目しているだけ、3:本当につまらんのだから仕方がない(特に今回のメイデンのライヴ前半)、の3点。2と3には理由があるので、重要な対立は熱狂派の1、2、3と棒立ち派の1である。
人数でいえば、圧倒的に多いのは熱狂派なので、通常のライヴで深刻な問題になることはそう多くない。しかし今回のメイデンに関していえば、新作を全曲披露する前半が終わり、Fear of the Darkのイントロが始まった時の大歓声は、ヒット曲に対する歓声に加えて「やっと知ってる曲が!」という年長ファンの安堵感もあったのではないか。私のいた2階席からみた会場の様子は、そういう声が聞こえてきそうなくらい、今回棒立ち派が目立ったように思う。
考えてみるとWrathchildもTroopersもThe Number of the Beastもないメイデンのライヴという、ある意味貴重な経験をしたとも言えるし、For the Greater Good of Godの情感豊かなヴォーカルやLoad of Lightの高音を完璧に再現したブルース・ディッキンソンのパフォーマンスなど、素晴らしいライヴであったことは間違いないが、ライヴとしての盛り上がりを考えれば、前回来日時の方が上だったように思う。
新作がライヴ向きではなかったこと、その新作が時間にしてライヴの約3分の2に達したこと、ファンの年齢の幅の大きさが、今回、予期せず熱狂派と棒立ち派の対立を大きく刺激した。コンサートの楽しみ方など人それぞれというのは大前提であるが、熱狂派をしらけさせるような楽しみ方がありか、良席を確保した者に熱狂する義務が認められるかなど、自由と義務と言葉を置き換えれば、法学部ですぐに議論できそうな問題でもある。
by eastriver46
| 2006-11-13 23:14
| Heavy Metal