2006年 10月 20日
Taking Heavy Metal Seriously#2 |
LOUD PARKに参加して、世代間ギャップについて考える
ヘヴィメタルの中でも、特にスピード、重さ、攻撃性を追求した一連のバンド群がいるが、そういったバンドとそのファンのために、LOUD PARKというイベントがここ数年行われている。この種のイベントは、デビューしたばかりの新人から中堅、ベテランと多数出演するため、チケット代が高く、その割に目当てのバンドはごくわずかということが結構ある。
しかし今回たまたま、Anthrax、Dio、Megadethというどれもベテランでしかもたまたま私が一度もライヴを体験したことのないバンドが一堂に会するというまたとない機会があるということで参加した。特にAnthraxは高校生のとき自分のバンドでやっていたくらいいれこんだバンドである。
ライヴのことを直前に知ったために、慌てて入手したチケットの整理番号は653番だった。しかし入場してみると、チケットの売れ行きがあまりよくなかったのか、あるいは一般人から見たらほとんど乱闘状態が続く前方エリアを避ける人が多かったのか、遅い番号にもかかわらず比較的前方の良い場所を確保できた。
ライヴはAnthraxからスタート。場内が暗転した後、精神病棟のサイレンが鳴るとMadhouseのリフが始まり、それにヒステリックなアームプレイが重なる。生のMadhouseに大興奮。前方エリアは熱狂的ファンによるモッシュピットができあがっていたが、2曲目Got the Timeが始まると、ピットはさらに凄まじい状態に。健康診断で体重増加を注意される年代である私は、危険をさけてやや離れた場所から声援を送った。
Got the Timeが終わると、スコット・イアンがステージ中央に出てコードを鳴らすと、次の曲を察知した観客は大歓声を送った。名曲中の名曲Caught in a Moshである。フランク・ベロのベースが曲を勢いづかせるとモッシュピットは凄い状態になりますます危険な状態に。その様子をステージ上からメンバーはニコニコしながら見ている。なんて素晴らしいライヴなのかと嬉しくなった。
その後もAntisocial、Indiansと名曲目白押しのステージは、観客全員でジャンプしながらのBring the Noiseで終了。来年ニューアルバムを作ってまた来るよ、と言ってメンバーはステージを去ったが、直後にスタッフが出てきて、今日はジョーイ・ベラドナの誕生日だ!と告げると、また大歓声で、ジョーイも嬉しそうに挨拶をして、名残惜しそうに約1時間のセットを終えた。
セットリスト
1: Madhouse 2: Got the Time 3: Caught In a Mosh 4: Antisocial 5: Indians 6: Medusa 7: I Am the Law 8: Bring the Noise
Anthraxのステージの後はDioである。ここで、前方のエリアにいたファンは何人か休憩をとるためか会場から出て行った。彼らにとってDioはそれほど魅力的なバンドではないのかもしれないが、今年64歳のロニー・ジェイムズ・ディオ率いる彼らのステージは、ヘヴィメタル・ファンなら一度は観ておくべきもので、私は楽しみに始まるのを待っていた。
Anthraxの時には何もなかったステージ上には、Dio用のバックドロップがつけられ、気分が高まる。メンバーが登場して1曲目が始まった。なんと静かに始まるChildren of the Seaである。ラウド系バンドが集うこのイベントでChildren...からスタートするというのは、Dioの妥協のない姿勢を強く感じて胸を打たれた。
多くのファンは、何の曲かわからず早い曲でもないのでノリ方がわかっていないように見えた。Stand Up and Shoutの早いリフには、客もよく反応してノっていたが、続く名曲Holy Diverでは再び勢いが弱まってしまった。スラッシュ、モダン・ヘヴィネス、ニュー・メタルなど細かいジャンル分けがあるが、いずれもそれらの魅力の中心は曲の重さにあるというのに、Holy Diverへの反応の薄さはどうしたことか。
おそらくはPanteraのVulgar Display of Powerあたりからはじまり、そして最近ではLamb of Godなんかに代表されるこの種のラウド系に最近はまった若いファンには、Holy Diverの、粘っこい古典的な重さがわからなかったのかもしれない。年長世代の愚痴と自覚しつつ分析すると、化学調味料にならされたために、素材の味がわからなくなっている状態に似ている気がした。
ステージはその後、ドラムソロを挟んでThe Temple of the KingからKill the Kingと続いた。この辺りから少しずつ客の反応がよくなってきたが、中でもKill the Kingが始まると、私の真後ろから「うおー!」という絶叫が聞こえ、Danger! Danger! The Queen's about to kill !!と歌詞を一言一句正確に歌っている。振り返ると、ぶっとい眉毛に黒ぶち眼鏡をかけ、ネクタイを締めたサラリーマンが汗だくで絶叫していた。
その後も、Rainbow、Black Sabbathと渡り歩いたロニーが、ヘヴィメタル史に刻み込んだ名曲を連発。これには若い世代のファンも大歓声で、私と後ろのおっさんも負けじと大歓声を送り、最後は会場が一体となってDioの偉大さに敬意を表した。時間の限られたイベントなのでソロタイムのカットとも思うが、その時間ディオは休憩していたに違いない。年齢を考えると仕方がないし、あれだけのパフォーマンスを見せてくれたのだから、やはり素直にディオに感謝したい。
セットリスト
1: Children of the Sea 2: Stand Up and Shout 3: Holy Diver 4: Gypsy~Drum Solo 5: The Temple of the King 6: Kill the King 7: Rainbow in the Dark~Guitar & Key Solo 8: Catch the Rainbow 9: Man on the Silver Mountain 10: Long Live Rock'n'Roll 11: Heaven and Hell
トリのMegadethは、ファンではあるが、大ファンではない。Megadethを率いるデイヴ・ムステインはかつてMetallicaに在籍していたわけだが、ヴォーカルとギターを兼任するMetallicaのジェイムズと比較すると、彼はフィンガリングに気を取られるのか、あまりステージ正面を向いていない。そのせいかステージ上でのカリスマ性にかける。これが私のMegadethに対する印象だった。フロントマンへの評価がそのままバンドの評価に直結していたのである。
しかし、初めて体験するMegadethのライヴは、威厳に満ちた堂々としたもので、私も十分楽しめるものだった。何より、気になっていたデイヴの左手の問題が、ほとんど気にならず、むしろ器用に小指を使う様子が優雅にさえ思えた。Dioの時は比較的静かだった前方の観客も、Megadethのステージが始まると勢いを取り戻し、Set the World Afireが始まるとさらに熱狂した。
Wake Up DeadやTornado of Soulsなどの初期の曲は私にも十分なじみがあり、AnthraxやDioの時よりかは若干後方にさがった私も、大歓声を送った。ステージ上でデイヴが話し始めようとした時、ファンが叫んだ声がかぶってしまったが、デイヴはステージ上からそのファンをにらんで、首をちょん切るゼスチャーをし、ファンは爆笑。デイヴがこんなパフォーマンスをするとは意外だった。
「次は新曲で、タイトルはWashington's...」というと一部のファンが「Next!」と叫び「なんだみんな知ってるのか、じゃあ他の曲やるか?」とか言いながらWashington's Nextを始めたり「この曲わかるかな?」と言いながら、代表曲Holy Warsを始めるなど、クールで、どちらかと言えば気難しい人というイメージを持っていたデイヴが、これだけしゃべれるというのが意外な驚きだった。
演奏は素晴らしく、どの曲もCDで聞くよりも数倍ヘヴィでアグレッシブに披露された。途中Peace Sellsでは、真っ先にステージを終えたAnthraxのジョーイとダン・スピッツがステージに登場してコーラスを一緒に歌うというサプライズもあった。前方のモッシュピットは危険でとても近づける雰囲気ではなかったが、私のいた後方は平和に、しかし大歓声をあげてライヴに参加していたし、とても楽しいステージだった。
セットリスト
1: Blackmail the Universe 2: Set the World Afire 3: Wake Up Dead 4: Skin O' My Teeth 5: Tornado of Souls 6: She Wolf 7: Take No Prisoners 8: Symphony of Destruction 9: Hangar 18 10: Washington's Next 11: Mechanix 12: Peace Sells...But Who's Buying? 13: Holy Wars...The Punishment Due
ヘヴィメタルの中でも、特にスピード、重さ、攻撃性を追求した一連のバンド群がいるが、そういったバンドとそのファンのために、LOUD PARKというイベントがここ数年行われている。この種のイベントは、デビューしたばかりの新人から中堅、ベテランと多数出演するため、チケット代が高く、その割に目当てのバンドはごくわずかということが結構ある。
しかし今回たまたま、Anthrax、Dio、Megadethというどれもベテランでしかもたまたま私が一度もライヴを体験したことのないバンドが一堂に会するというまたとない機会があるということで参加した。特にAnthraxは高校生のとき自分のバンドでやっていたくらいいれこんだバンドである。
ライヴのことを直前に知ったために、慌てて入手したチケットの整理番号は653番だった。しかし入場してみると、チケットの売れ行きがあまりよくなかったのか、あるいは一般人から見たらほとんど乱闘状態が続く前方エリアを避ける人が多かったのか、遅い番号にもかかわらず比較的前方の良い場所を確保できた。
ライヴはAnthraxからスタート。場内が暗転した後、精神病棟のサイレンが鳴るとMadhouseのリフが始まり、それにヒステリックなアームプレイが重なる。生のMadhouseに大興奮。前方エリアは熱狂的ファンによるモッシュピットができあがっていたが、2曲目Got the Timeが始まると、ピットはさらに凄まじい状態に。健康診断で体重増加を注意される年代である私は、危険をさけてやや離れた場所から声援を送った。
Got the Timeが終わると、スコット・イアンがステージ中央に出てコードを鳴らすと、次の曲を察知した観客は大歓声を送った。名曲中の名曲Caught in a Moshである。フランク・ベロのベースが曲を勢いづかせるとモッシュピットは凄い状態になりますます危険な状態に。その様子をステージ上からメンバーはニコニコしながら見ている。なんて素晴らしいライヴなのかと嬉しくなった。
その後もAntisocial、Indiansと名曲目白押しのステージは、観客全員でジャンプしながらのBring the Noiseで終了。来年ニューアルバムを作ってまた来るよ、と言ってメンバーはステージを去ったが、直後にスタッフが出てきて、今日はジョーイ・ベラドナの誕生日だ!と告げると、また大歓声で、ジョーイも嬉しそうに挨拶をして、名残惜しそうに約1時間のセットを終えた。
セットリスト
1: Madhouse 2: Got the Time 3: Caught In a Mosh 4: Antisocial 5: Indians 6: Medusa 7: I Am the Law 8: Bring the Noise
Anthraxのステージの後はDioである。ここで、前方のエリアにいたファンは何人か休憩をとるためか会場から出て行った。彼らにとってDioはそれほど魅力的なバンドではないのかもしれないが、今年64歳のロニー・ジェイムズ・ディオ率いる彼らのステージは、ヘヴィメタル・ファンなら一度は観ておくべきもので、私は楽しみに始まるのを待っていた。
Anthraxの時には何もなかったステージ上には、Dio用のバックドロップがつけられ、気分が高まる。メンバーが登場して1曲目が始まった。なんと静かに始まるChildren of the Seaである。ラウド系バンドが集うこのイベントでChildren...からスタートするというのは、Dioの妥協のない姿勢を強く感じて胸を打たれた。
多くのファンは、何の曲かわからず早い曲でもないのでノリ方がわかっていないように見えた。Stand Up and Shoutの早いリフには、客もよく反応してノっていたが、続く名曲Holy Diverでは再び勢いが弱まってしまった。スラッシュ、モダン・ヘヴィネス、ニュー・メタルなど細かいジャンル分けがあるが、いずれもそれらの魅力の中心は曲の重さにあるというのに、Holy Diverへの反応の薄さはどうしたことか。
おそらくはPanteraのVulgar Display of Powerあたりからはじまり、そして最近ではLamb of Godなんかに代表されるこの種のラウド系に最近はまった若いファンには、Holy Diverの、粘っこい古典的な重さがわからなかったのかもしれない。年長世代の愚痴と自覚しつつ分析すると、化学調味料にならされたために、素材の味がわからなくなっている状態に似ている気がした。
ステージはその後、ドラムソロを挟んでThe Temple of the KingからKill the Kingと続いた。この辺りから少しずつ客の反応がよくなってきたが、中でもKill the Kingが始まると、私の真後ろから「うおー!」という絶叫が聞こえ、Danger! Danger! The Queen's about to kill !!と歌詞を一言一句正確に歌っている。振り返ると、ぶっとい眉毛に黒ぶち眼鏡をかけ、ネクタイを締めたサラリーマンが汗だくで絶叫していた。
その後も、Rainbow、Black Sabbathと渡り歩いたロニーが、ヘヴィメタル史に刻み込んだ名曲を連発。これには若い世代のファンも大歓声で、私と後ろのおっさんも負けじと大歓声を送り、最後は会場が一体となってDioの偉大さに敬意を表した。時間の限られたイベントなのでソロタイムのカットとも思うが、その時間ディオは休憩していたに違いない。年齢を考えると仕方がないし、あれだけのパフォーマンスを見せてくれたのだから、やはり素直にディオに感謝したい。
セットリスト
1: Children of the Sea 2: Stand Up and Shout 3: Holy Diver 4: Gypsy~Drum Solo 5: The Temple of the King 6: Kill the King 7: Rainbow in the Dark~Guitar & Key Solo 8: Catch the Rainbow 9: Man on the Silver Mountain 10: Long Live Rock'n'Roll 11: Heaven and Hell
トリのMegadethは、ファンではあるが、大ファンではない。Megadethを率いるデイヴ・ムステインはかつてMetallicaに在籍していたわけだが、ヴォーカルとギターを兼任するMetallicaのジェイムズと比較すると、彼はフィンガリングに気を取られるのか、あまりステージ正面を向いていない。そのせいかステージ上でのカリスマ性にかける。これが私のMegadethに対する印象だった。フロントマンへの評価がそのままバンドの評価に直結していたのである。
しかし、初めて体験するMegadethのライヴは、威厳に満ちた堂々としたもので、私も十分楽しめるものだった。何より、気になっていたデイヴの左手の問題が、ほとんど気にならず、むしろ器用に小指を使う様子が優雅にさえ思えた。Dioの時は比較的静かだった前方の観客も、Megadethのステージが始まると勢いを取り戻し、Set the World Afireが始まるとさらに熱狂した。
Wake Up DeadやTornado of Soulsなどの初期の曲は私にも十分なじみがあり、AnthraxやDioの時よりかは若干後方にさがった私も、大歓声を送った。ステージ上でデイヴが話し始めようとした時、ファンが叫んだ声がかぶってしまったが、デイヴはステージ上からそのファンをにらんで、首をちょん切るゼスチャーをし、ファンは爆笑。デイヴがこんなパフォーマンスをするとは意外だった。
「次は新曲で、タイトルはWashington's...」というと一部のファンが「Next!」と叫び「なんだみんな知ってるのか、じゃあ他の曲やるか?」とか言いながらWashington's Nextを始めたり「この曲わかるかな?」と言いながら、代表曲Holy Warsを始めるなど、クールで、どちらかと言えば気難しい人というイメージを持っていたデイヴが、これだけしゃべれるというのが意外な驚きだった。
演奏は素晴らしく、どの曲もCDで聞くよりも数倍ヘヴィでアグレッシブに披露された。途中Peace Sellsでは、真っ先にステージを終えたAnthraxのジョーイとダン・スピッツがステージに登場してコーラスを一緒に歌うというサプライズもあった。前方のモッシュピットは危険でとても近づける雰囲気ではなかったが、私のいた後方は平和に、しかし大歓声をあげてライヴに参加していたし、とても楽しいステージだった。
セットリスト
1: Blackmail the Universe 2: Set the World Afire 3: Wake Up Dead 4: Skin O' My Teeth 5: Tornado of Souls 6: She Wolf 7: Take No Prisoners 8: Symphony of Destruction 9: Hangar 18 10: Washington's Next 11: Mechanix 12: Peace Sells...But Who's Buying? 13: Holy Wars...The Punishment Due
by eastriver46
| 2006-10-20 22:58
| Heavy Metal