2010年 04月 11日
判例評釈:あっさりラーメンと緊急避難 |
【事実の概要】
本件被告たる女子大生3人組は、2001年3月8日深夜、天下一品御影店店内において、ラーメンを人数分注文した。店員が「スープはこってり、あっさりとございますが」と問いかけたところ、被告らは「全てあっさりで」と注文した。そこで、本件原告である東川浩二(仮名)は、天下一品に来店しつつもあっさりラーメンを注文する行為が、天下一品の名誉、並びにこってりラーメンを注文していた自己に対する侮辱であるとして、被告に対して損害賠償を求める訴訟を提起した。
原審において、被告は、店内に「あっさりラーメンを一度ご賞味下さい」という張り紙があること、店員が注文の際にこってりかあっさりかの確認をとったことから、あっさりを注文することの正当性を主張した。しかしながら裁判所は、店内の張り紙や店員による確認があったとしても、天下一品に来店した限りは「こってりが注文されるであろう、ということは、確立された法原則である」という前提に立ち、被告の主張を全麺的に退けた。すなわち、店内の掲示と店員の確認は、「急性の体調不良やこってりを受け付けない女性がデートでの食事に際して、緊急避難的メニューとして『あっさり』を利用することが可能であることを告知しているに過ぎず」、本件原告と店員の証言によれば、被告の体調不良を示唆する言動や態度は見られなかったのであるから、原告や店員が、「こってりが注文されるだろう」と推測したことは合理的であるとした。さらに「自ら進んで来店したにもかかわらず、こってりを注文するだろう、という周囲の信頼を裏切り、あっさりを注文した被告の行為は、原告と天一に強い不快感と不信感を与え、その責任は極めて重大である」と述べて、原告と天下一品が被った精神的苦痛に対して500万円の損害賠償と「こってりラーメンの天下一品」に対する名誉を著しく傷つけたことにより、懲罰的損害賠償5600億円の支払いを命じた。
被告は、あっさりラーメンを注文したことの違法性を認めつつ、損害賠償額が高額すぎるとして、上訴した。
【判旨】〔キムラ裁判官による意見〕
天下一品とはこってりラーメンのことであり、こってりラーメンとは天下一品のことである。したがって、天下一品におけるあっさりラーメンが、緊急避難的メニューであるとした原審の判断に誤りはなく、そのようなメニューを進んで注文する被告の行為は、現実にあっさりラーメンを必要とする者にあっさりラーメンを提供するサービスに支障を来すものであり、その責任は極めて重いといわざるを得ない。
本法廷は、原審の判断を全麺的に支持し、加えて損害賠償額が低すぎることから、結論として被告に9800億6000万円の支払いを命じるものである。
【解説】
本件では「あっさりラーメン」の性格が最大の争点となった。天下一品は、こってりラーメンによって成功したのであり、あっさりは、あくまで、原審が認定したように「緊急避難的メニュー」であることを裁判所が明言した意味は大きい。天下一品の麺は、ストレートのグニャグニャした柔らかい麺であり、これはこってりには適していても、あっさりのような通常のラーメンにふさわしいものではない。また、各テーブルに設置されている「ラーメンのたれ」はこってりのために置かれているのであって、決してあっさりに入れてはならない。このように、天下一品においては、全てがこってりラーメンを中心に回っているのであり、極論すれば、あっさりラーメンは、本来天下一品において提供するべきではない。
このように、あっさりは緊急避難的メニューであり、その注文は、現在の危難(腹痛など)を回避するためにやむをえずになされたものでなければならず、他に鳥の唐揚げなどの単品を注文することによって、同伴者と店に不快感を与えないようにすることができないかが常に問われなければならない。
また損害賠償額が極めて高額になったが、天下一品が、他に類を見ない個性的なラーメンであることに鑑みれば、文化財保護と同様の観点から、特段の保護に値するラーメンであることは疑いがない。従って、仮にこの金額が被告にかなりの負担を課すとしても、やむを得ないと考えられる。
【参考文献】
「あっさりラーメンと緊急避難」ジュルスト1022号35頁
Ken'ichi Nakashima, Taking ASSARI Seriously, 25 Tenka L. Rev. 210 (1998).
※冗談です。
本件被告たる女子大生3人組は、2001年3月8日深夜、天下一品御影店店内において、ラーメンを人数分注文した。店員が「スープはこってり、あっさりとございますが」と問いかけたところ、被告らは「全てあっさりで」と注文した。そこで、本件原告である東川浩二(仮名)は、天下一品に来店しつつもあっさりラーメンを注文する行為が、天下一品の名誉、並びにこってりラーメンを注文していた自己に対する侮辱であるとして、被告に対して損害賠償を求める訴訟を提起した。
原審において、被告は、店内に「あっさりラーメンを一度ご賞味下さい」という張り紙があること、店員が注文の際にこってりかあっさりかの確認をとったことから、あっさりを注文することの正当性を主張した。しかしながら裁判所は、店内の張り紙や店員による確認があったとしても、天下一品に来店した限りは「こってりが注文されるであろう、ということは、確立された法原則である」という前提に立ち、被告の主張を全麺的に退けた。すなわち、店内の掲示と店員の確認は、「急性の体調不良やこってりを受け付けない女性がデートでの食事に際して、緊急避難的メニューとして『あっさり』を利用することが可能であることを告知しているに過ぎず」、本件原告と店員の証言によれば、被告の体調不良を示唆する言動や態度は見られなかったのであるから、原告や店員が、「こってりが注文されるだろう」と推測したことは合理的であるとした。さらに「自ら進んで来店したにもかかわらず、こってりを注文するだろう、という周囲の信頼を裏切り、あっさりを注文した被告の行為は、原告と天一に強い不快感と不信感を与え、その責任は極めて重大である」と述べて、原告と天下一品が被った精神的苦痛に対して500万円の損害賠償と「こってりラーメンの天下一品」に対する名誉を著しく傷つけたことにより、懲罰的損害賠償5600億円の支払いを命じた。
被告は、あっさりラーメンを注文したことの違法性を認めつつ、損害賠償額が高額すぎるとして、上訴した。
【判旨】〔キムラ裁判官による意見〕
天下一品とはこってりラーメンのことであり、こってりラーメンとは天下一品のことである。したがって、天下一品におけるあっさりラーメンが、緊急避難的メニューであるとした原審の判断に誤りはなく、そのようなメニューを進んで注文する被告の行為は、現実にあっさりラーメンを必要とする者にあっさりラーメンを提供するサービスに支障を来すものであり、その責任は極めて重いといわざるを得ない。
本法廷は、原審の判断を全麺的に支持し、加えて損害賠償額が低すぎることから、結論として被告に9800億6000万円の支払いを命じるものである。
【解説】
本件では「あっさりラーメン」の性格が最大の争点となった。天下一品は、こってりラーメンによって成功したのであり、あっさりは、あくまで、原審が認定したように「緊急避難的メニュー」であることを裁判所が明言した意味は大きい。天下一品の麺は、ストレートのグニャグニャした柔らかい麺であり、これはこってりには適していても、あっさりのような通常のラーメンにふさわしいものではない。また、各テーブルに設置されている「ラーメンのたれ」はこってりのために置かれているのであって、決してあっさりに入れてはならない。このように、天下一品においては、全てがこってりラーメンを中心に回っているのであり、極論すれば、あっさりラーメンは、本来天下一品において提供するべきではない。
このように、あっさりは緊急避難的メニューであり、その注文は、現在の危難(腹痛など)を回避するためにやむをえずになされたものでなければならず、他に鳥の唐揚げなどの単品を注文することによって、同伴者と店に不快感を与えないようにすることができないかが常に問われなければならない。
また損害賠償額が極めて高額になったが、天下一品が、他に類を見ない個性的なラーメンであることに鑑みれば、文化財保護と同様の観点から、特段の保護に値するラーメンであることは疑いがない。従って、仮にこの金額が被告にかなりの負担を課すとしても、やむを得ないと考えられる。
【参考文献】
「あっさりラーメンと緊急避難」ジュルスト1022号35頁
Ken'ichi Nakashima, Taking ASSARI Seriously, 25 Tenka L. Rev. 210 (1998).
※冗談です。
by eastriver46
| 2010-04-11 23:02