2005年 06月 24日
KKK(キレン被告)とマイケル・ジャクソン |
黒人1人を含む公民権運動家3人を殺害した件で、元KKK幹部のキレン被告が有罪評決を受け、今日禁固60年が言い渡されました。陪審が有罪無罪を決定し、裁判官が量刑を決めるというのがアメリカの刑事陪審制度のやり方です(なお死刑事件については例外あり)。
事件は1964年6月に起きたもので、当時もキレン被告は起訴されましたが陪審の不一致(いつまでたっても全員一致の結論に至らないこと、刑事の場合は実質的に検察側の敗訴)により釈放されていました。最近になってミシシッピーの地元紙が、KKK幹部によるキレン被告の関与をほのめかす発言をスクープし、検察が再捜査の結果、今年1月に起訴して今回の裁判となりました。
裁判が開始されると、あとは非常に素早い展開で、過去の訴訟記録の読み上げや、元KKKのメンバーらによる証言を経て終了。弁護側がどのような証人を立てたのかは報道がありませんでした。なお被告側の弁護士は元KKKのメンバーとのこと。証拠調べが4日間、陪審の評議が5時間半で、謀殺ではなく故殺で有罪の評決に至りました。
謀殺の場合は殺意の認定が必要ですが、故殺はそれが不要という違いがあります。各紙に掲載された陪審員の証言によると「当初被告は罪に問われなければならないとする立場と、しかし謀殺にするだけの証拠がないという意見に別れた。もし故殺という選択がなければ、我々は無罪という評決になっていただろう」、「しかし彼が暴行を命じたことは確かな証拠から認定できた」と、ここでも証拠重視の姿勢が伺えます。
評議中に問題はなかったか?「はじめ自分の見解に固執する人がいたが、別の陪審員が制止して、自分たちの任務は証拠に基づいて(評議を)進めることだと何度も説明したんだ。」、「説示で言われた通り、過去の(キレン被告の)事件についても一切議論しなかったし、議論が人種間で割れるということもなかった(白人9人黒人3人)」ということです。
今回の事件でもわかるのは、ジャクソン訴訟の場合と同様に、陪審員が裁判官の説示に従い、偏見にとらわれずに、懸命に事実認定をしようとしていることです。「家族の証言に突き動かされて証拠もなく彼を有罪にするのは、今まさに彼が裁かれている同じ罪を犯すことだ」と陪審員は述べています。今日言い渡された刑は禁固60年。この事件で最高の量刑となり、少なくとも20年は仮釈放なしということです。
ところで、なぜ表題にマイケル・ジャクソンの名前が挙がっているのか。それは毎日新聞の報道の姿勢に疑問を感じるからです。同紙はジャクソンの評決に関しては「感情に流されがちという問題点が指摘される」陪審員が、口八丁の弁護士に「巧みに誘導」された結果の無罪評決により「真実の闇」は晴れなかったと報じています(6月14、15日記事をWebで確認したもの)。
一方で今回の事件の扱いの何と小さいこと(6月24日配信記事をWebで確認)。しかも評決自体には何の疑問も示されていません。KKKの犯罪ということで、悪いことをしたに決まっているからでしょうか。言い換えれば、ジャクソンが有罪になっていたら真実の闇は晴れたのでしょうか。あれだけの奇行や大量の猥褻雑誌の所持からすれば、何か怪しげなことをしたに違いないと推測するのは容易ですが、陪審員はそれをしませんでした。
陪審制度を批判する人が持ち出す理由のうちに、法律の素人である陪審員がメディアの影響で偏った判断を下す、というものがありますが、実はそういう影響を一番受けているのは当のメディアそのものではなかろうかという疑問があります。また陪審制度を評価するのであれば、陪審員に的確な説示を行う裁判官の役割はもっとクローズアップされてしかるべきと思います。
事件は1964年6月に起きたもので、当時もキレン被告は起訴されましたが陪審の不一致(いつまでたっても全員一致の結論に至らないこと、刑事の場合は実質的に検察側の敗訴)により釈放されていました。最近になってミシシッピーの地元紙が、KKK幹部によるキレン被告の関与をほのめかす発言をスクープし、検察が再捜査の結果、今年1月に起訴して今回の裁判となりました。
裁判が開始されると、あとは非常に素早い展開で、過去の訴訟記録の読み上げや、元KKKのメンバーらによる証言を経て終了。弁護側がどのような証人を立てたのかは報道がありませんでした。なお被告側の弁護士は元KKKのメンバーとのこと。証拠調べが4日間、陪審の評議が5時間半で、謀殺ではなく故殺で有罪の評決に至りました。
謀殺の場合は殺意の認定が必要ですが、故殺はそれが不要という違いがあります。各紙に掲載された陪審員の証言によると「当初被告は罪に問われなければならないとする立場と、しかし謀殺にするだけの証拠がないという意見に別れた。もし故殺という選択がなければ、我々は無罪という評決になっていただろう」、「しかし彼が暴行を命じたことは確かな証拠から認定できた」と、ここでも証拠重視の姿勢が伺えます。
評議中に問題はなかったか?「はじめ自分の見解に固執する人がいたが、別の陪審員が制止して、自分たちの任務は証拠に基づいて(評議を)進めることだと何度も説明したんだ。」、「説示で言われた通り、過去の(キレン被告の)事件についても一切議論しなかったし、議論が人種間で割れるということもなかった(白人9人黒人3人)」ということです。
今回の事件でもわかるのは、ジャクソン訴訟の場合と同様に、陪審員が裁判官の説示に従い、偏見にとらわれずに、懸命に事実認定をしようとしていることです。「家族の証言に突き動かされて証拠もなく彼を有罪にするのは、今まさに彼が裁かれている同じ罪を犯すことだ」と陪審員は述べています。今日言い渡された刑は禁固60年。この事件で最高の量刑となり、少なくとも20年は仮釈放なしということです。
ところで、なぜ表題にマイケル・ジャクソンの名前が挙がっているのか。それは毎日新聞の報道の姿勢に疑問を感じるからです。同紙はジャクソンの評決に関しては「感情に流されがちという問題点が指摘される」陪審員が、口八丁の弁護士に「巧みに誘導」された結果の無罪評決により「真実の闇」は晴れなかったと報じています(6月14、15日記事をWebで確認したもの)。
一方で今回の事件の扱いの何と小さいこと(6月24日配信記事をWebで確認)。しかも評決自体には何の疑問も示されていません。KKKの犯罪ということで、悪いことをしたに決まっているからでしょうか。言い換えれば、ジャクソンが有罪になっていたら真実の闇は晴れたのでしょうか。あれだけの奇行や大量の猥褻雑誌の所持からすれば、何か怪しげなことをしたに違いないと推測するのは容易ですが、陪審員はそれをしませんでした。
陪審制度を批判する人が持ち出す理由のうちに、法律の素人である陪審員がメディアの影響で偏った判断を下す、というものがありますが、実はそういう影響を一番受けているのは当のメディアそのものではなかろうかという疑問があります。また陪審制度を評価するのであれば、陪審員に的確な説示を行う裁判官の役割はもっとクローズアップされてしかるべきと思います。
by eastriver46
| 2005-06-24 01:08
| 英米法関係